「クリティカル・シンキング」セミナーレポート

さまざまな観点からのクリティカル・シンキングの重要性

  次に、森上教育研究所所長・森上展安先生の「国語教育におけるクリティカル・シンキングを学ぶことの意義」という演題の講演が行われました。
  森上先生は、昨今の中学入試事情を紹介して、「中学入試の社会や理科の問題でも、出題者は考えさせることを意図していますが、受験生は考えずに丸暗記するので、勉強がつまらないのです」と述べます。
「クリティカル・シンキングについては評価をすべきではないと思います。多様な視点を持たせることがねらいであるわけですから、採点をする必要はないと思うわけです。また、子どもにとってつまらないものではなく、考えればおもしろいなあと思うようなものであることが望ましいでしょう。そして、それは、やはり、国語教育でやるのが筋ではないかと思います」と、国語教育でクリティカル・シンキングを学ぶことの意義を指摘しました。

  最後に演壇に立ったのは、東京工業大学特任教授・RMロンドンパートナーズ代表取締役の増沢隆太先生です。増沢先生は、「キャリア教育におけるクリティカル・シンキングの重要性」と題し、就職活動からライフキャリアを形成する時期にもクリティカル・シンキングが重要であるという視点で講演を行いました。
  キャリア教育においても、クリティカル・シンキングが重要で、それこそが人生に必要な力であると、増沢先生は強調しました。 「小さいころから優秀で、一流と言われる中学高校を経て有名大学に進んだものの、就職活動で挫折する学生が少なくありません。大学に入るまでは、『正解はひとつ』と思い込み、正しいアプローチをすれば唯一の答えに到達できるとして進んできたのですが、就職活動では、それとは違う問題解決能力が求められているからです。大学、あるいは修士課程のある時期までは『正解がある』世界ですが、就職活動を経て社会に出ることをめざす時期からは一転して『正解がひとつではない』世界に変わります。仕事を考える段階になって、『資格は必要なのか?』『学生生活でやっておくべきことは?』といった、『正解のない問い』に答えるためには、クリティカル・シンキングが必要です。正しい順序・序列、正確な知識をもとに、正解を導く受験勉強や学校教育に加え、論理を打ち立て、理解し、論理的に答えを導き出すロジカル・シンキングができるようになり、さらに、発想や説得を考え、目的達成をめざすクリティカル・シンキングができることが求められるのです」

森上展安 先生

増沢隆太 先生

  セミナーを通じて、3人の講師がそれぞれの視点から論じたことにより、クリティカル・シンキングの意義、そして重要性が教員の皆さんに強く伝わったはずです。少しでも多くの教育現場に、クリティカル・シンキングを意識した教育が浸透していくことが期待されます。