活用方法(全体から部分につなげる表現技術)

都内、私立高校でご採用いただいております『クリティカル・シンキング』の活用実例をご紹介いたします。先生は、普通科特進コースおよび進学コースで、『クリティカル・シンキング』を導入した授業を実践されています

「表現技術はスキルですから、誰でも学力関係なく身に付くはずだと考えて学んでいます。6ヶ年一貫計画の中で、どういう生徒を育てようか議論を繰り返してきました。その答えがコミュニケーション力、問題発見・解決力、自己肯定力、グローバル力となっています。」

「また、英語に力を入れている学校のため、コミュニケーション力として中学3年生時点において自分で内容・構成を考えて3分間の英語スピーチを行っています。それを受け、コミュニケーションの基盤である日本語をしっかりできるようにしてあげたいという思いもあります。」

このように先生は語り、6ヶ年一貫計画の中での教育を掲げています。

授業の目的をご紹介します。
授業の際には、全体を見てから部分説明を心掛けることを重要視しています
「私の授業の目的は自分の考えを相手にわかりやすく説明すること、今目の前で起きている出来事を順序立てて説明することにあります。1つ目の方法として、例えばとなぜならを使いこなすことです。2つ目については、これからのグローバル社会を生き抜く上で自分自身が目の前で起きていることを説明することが、独創性の第一歩になると考えています。特に知識を人に説明することは、文化や年齢の差を踏まえて行う必要があるため、グローバル・コミュニケーションで必要だと感じています。全体を見てから部分を考えることを意識することが目的のため、知識の有無や文法力を測ることが目的ではありません。」
1学期はこの中でも自分の考えを相手に説明することを中心に学び、テキストでは具体化力と抽象化力に力を入れた教育を行っていたそうです。
映像を交えた授業実践例

「この授業の目的は2つあります。1つは自分の考えをちゃんと伝えられること。だから2つのことをやりました。具体と抽象です。具体的には例えばと理由を表すなぜならです。2学期になって目の前で見えているものや起きていることを説明できる練習をやりました。具体的には、国旗や絵の説明です。」

そう言うと先長谷生は内容の復習も兼ねて、ある国の国旗を持ち出し、生徒に説明を求めました。

「これから、ある国の国旗の説明をします。形は横長の長方形で、同じ形の縦長の長方形が三等分に並んでいて、左から赤・黄・青です、これである国の国旗の説明を終わりにします」(男子生徒)

この国旗がわかるでしょうか。答えはルーマニアです。授業では全体を説明してから、部分を説明することが共有されています。クラスメートも国旗がわかったという生徒の手が続々と上がり、拍手が起きました。

その後、先生は、横長の長方形が全体図に当たり、部分として同じ形の長方形が三等分・色の説明が当たると補足しました。その後、授業では引き続き「ギャップ調整力」を伸ばす課題に取り組みます。「『文化祭』とはどのようなものか、小学生にもわかるように説明しなさい」という例題です。ここでも、全体を説明してから、部分ということを共有します。

また、中学生と小学生というギャップを克服するために、どのような工夫をしているのかを説明します。また、このギャップ調整力がなぜ必要なのかを生徒にとって身近な行事を例にすることで生徒自身も理解を深め、共有しています。

続いて、生徒自身が使用することが多いあるアプリケーションについて課題を出します。試行錯誤しながらも黒板に生徒がまとめた内容がこちらです。

【全体】

  • メールの一種
  • アプリの一種
  • スマートフォン、アイフォン、パソコンなどで行うもの
  • グループを作り、一度に大勢の人に文字や音楽を情報として送れる

【部分】

  • 無料・ゲームもできる
  • 10代~40代まで幅広く使用されている

【ギャップ】

  • メールと似ているが、メールと異なり、連絡を見たかどうかを既読という形で確認できる

答えは何でしょうか。答えは携帯アプリケーションであるLINEです。ただ、先生は生徒全員に質問を投げかけます。「おばあさん、LINEはアプリの一種なんだよ。で、わかるかな?わからないよね。じゃあ、どうする?」と質問を投げかけます。すると生徒から、様々な解答が出て、最終的には全体像として、「グループを作り、一度に大勢の人に文字や音楽を情報として送れる仕組み」となりました。さっそく生徒達は自分の言葉で文を書いていました。
次の課題では、応用としてある物を説明しました。これは、生徒にとっては身近な物を来日経験がない外国人に説明する問題で、グローバルな視野での課題です。先生からは、「全体から部分を考えた後にギャップを埋めてください。LINEの例でツイッターが出てきたように、種類も考えてくださいね。」というヒントが出ています。

【全体】

  • タオルの一種
  • 紙の一種
  • 手ぬぐいの一種

【部分】

  • 食事の前に汚れている顔や手を吹くもの
  • 病気や食中毒を防ぐために必要
  • 日本ではお店の人が出す
  • 冷たいものと温かいものがある
  • 袋に入っているものと入っていないものがある

【ギャップ調整】

  • 海外では自分自身で行うが、日本ではお店の人が出す

答えはいかがでしょうか。生徒はおしぼりを説明していました。楽しみながら表現技術を身に付け、説明の方法もつかんだようです。

生徒インタビュー

Q1今日の授業はどうでしたか?

LINEはいつも使用しているが、改めて説明してみると難しかったです。また、おしぼりの問題も日本では当たり前のことが海外では違うという文化の差に気付くことができました。(女子生徒)

Q2クリティカル・シンキングを学んで書く力は身に付きましたか?

受験勉強の際に文を書くことは好きではありませんでした。ただ、クリティカル・シンキングを学んで文をまとめ、書くことができるようになったのは、自分自身でも驚いています。(男子生徒)

Q3クリティカル・シンキングのどこが面白いですか?

色々な答えがあるところです。自分で色々考えて表現できるところが、楽しいです(女子生徒)

Q4日常生活に役立っていますか?

今までは具体的に話すことが苦手で、説明も避けていました。ただ、今では部活や学校での出来事を具体的に説明できるようになりました。特に部活動では、お互いのイメージを共有できるきっかけになっています。(男子生徒)

「このように、生徒たちもモチベーションを高め、成果を実感できるまでになったのです。
生徒は全体から部分を意識するきっかけをつかんでいますが、まだまだ不十分なところもあります。今後も指導を続けていきたいと思います」 

今後、『クリティカル・シンキング』をさらに有効に活用していくために、現場の先生からの声はたいへん貴重です。これらの声の蓄積により、本教材がいっそう魅力ある教材として発展していくことが期待されます。